私以外みんな不潔

私以外みんな不潔

2021年7月24日

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「私以外みんな不潔」能町みね子 幻冬舎

「文字通り激震が走りました」以来の能町みね子である。幼稚園年長の夏休みに札幌から茨城に転園してから卒園までの日々を描いている。繊細に詳細に幼稚園時代の感覚を再現している。そりゃあフィクションも入っているのかもしれないが、驚くほどのリアリティである。

私の場合、幼稚園時代のことなんて、ぼんやりとかすかにしか覚えていない。それも、困ったり嫌だったり不快だったりしたことばかりだ。人は、そういうネガティブな出来事のほうが記憶に残るものなのだろうか。実際、この本に描かれている出来事も、不快で困ったことが中心になっている。

小さい子はなんにもわかっていない、なんてことはない。ちゃんといろんなことを深く深く考えていて、でも、大人にそれを察知させないだけだ。ということを、子供時代の私は自覚していて、大人って子供のことがなんにもわかっていない、でも、私はちゃんとそれを覚えておいて、子供のことがわかる大人になるんだ、と思ったものだ。でも、結局そうはなれなかったのよねえ。

この本のオープニング、様々な地名に対する幼児の意見が述べられていて、それが今も続く能町みね子の地名へのこだわりと陸続きなのには感動した。人って、変わらないものね。

2019/2/4