あなた明日の朝お話があります

あなた明日の朝お話があります

2021年7月24日

「あなた明日の朝お話があります」  中場利一 光文社 8

中場利一は、もともと、「本の雑誌」の「三角窓口」という投稿コーナーの常連だった。当時編集長だった椎名誠が、彼の投稿があんまり面白いので、「今月の中場利一」というコーナーを勝手に作ったりしていた。そして、「本の雑誌」編集者のすすめで書いた「岸和田少年愚連隊」で作家デビューした。(「岸和田少年愚連隊」は、なんども映画化されていて、若かりし頃の千原ジュニアも主演している。)

中場利一の作品には、いい加減で、喧嘩ばかりしている、むちゃくちゃな男達がいつも出てくる。人をごまかして、金を稼いで、好きな女の子を泣かしてしまう、でも、どこか憎めない、実に勝手な男どもが暴れ回る。

この作品でも、資格を持たない嫁に診療所を任せてふらふらしている整形外科医とか、修理を依頼されたバイクをじーっと睨むだけで自然治癒させようとするバイク屋とか、保険金詐欺に加担する病院事務長とか、ふざけんな!的男どもが溢れている。

私の知ってる彼の作品は、そういうめちゃくちゃな男どもが、結構毎日楽しんで、そのせいでひどい目にあっても、全然反省しないみたいな物が多かったけれど、この作品はちょっと違うみたいだ。

自分のことが大好きで、自分さえよければいい、という男どもが出てくるのに自分よりも大事なモノができてしまって、それにココロ揺さぶられ、柄にもなく反省して、真面目になろうと(なれないことばっかりだけど)思ってしまったりするしおらしさがあって、なんだか笑える。

チュンバくん、結婚したもんなー。子どももできたのかな。少しはまっとうになってきたのかな。なんて思った。

2011/4/10