女中譚

2021年7月24日

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「女中譚」中島京子 朝日新聞出版

「東京観光」が面白かったので、図書館で中島さんの本を何冊か借りてきた。この本は2009年の作品。

秋葉原のメイド喫茶の常連である90歳すぎのおばあさんが語る思い出話。女中として働いていた頃の話なんだけど、どうしようもないヒモの男、ハーフのピアニストの少女、変わり者の文士などが登場する。着想は林芙美子や永井荷風などから来ているという。そして、このおばあさんの住む部屋の描写は、どうしたって故・森茉莉のそれとしか思えない。

2.26が好きだなあ、中島京子は。現実にあった事件を必ず絡めてくる。最終的には秋葉原無差別殺人事件まで登場する。現実感を出すためか。

第一話に登場するヒモは、こういうダメ男いるよなあ、とつくづく思う。そんな男のダメさ加減を十分承知の上で、何度でも騙されるもっとダメな女も、どんな時代にもいる。なんだかなあ。

短いけれど、一気に読める小説だった。この物語が「小さいおうち」につながっていったのかもしれない。

2017/4/15