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「東京観光」中島京子 集英社
「長いお別れ」以来の中島京子さんである。何冊か読んで、この人の書くものは信頼していいと確信した。この本は2007年から2011年の間にいくつかの雑誌やWEB媒体に書いた短編小説を集めてある。決して東京観光のガイドブックではない。
それぞれにテイストが違っていて、前菜のアラカルト盛り合わせみたいに気軽にいろんなものが楽しめる。結構とんでもない設定がさりげなく描かれていて、あれっと思ったりするのが楽しい。放課後しか現れない「ゴセイト」という生徒の話なんて実は奇想天外なはずなんだが、当たり前のように描かれていてそのまんまするりとその世界に入ってしまう。
短いけれど、どれも十分味わえる、電車の中で読むのが楽しい短編集だった。
2017/4/14