仔羊の巣

2021年7月24日

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「仔羊の巣」坂木司 創元推理文庫

「青空の卵」の続編だそうだ。ところが、前篇は読んでいない。たまたま旅先で読本がなくなって夫から借り受けて読んだだけ。夫いわく、前作よりもこれのほうが良くなっている、とのこと。

引きこもり探偵の鳥井と、その補佐役というか、対外的なことを引き受ける坂木。坂木は作者名と同じだ。人が死なない、日常の謎を解くミステリ。鳥井は坂木なしでは一切外出もできないし、ぶっきらぼうで、料理だけは上手なオトコ。坂木は、鳥井のためにすべてを投げ打つ、でも、ちゃんと仕事もこなし、友達もいて、おまけに女子にも一応モテる、ひたすら心優しいオトコ。

なんだかなあ、なんだかなあ、と思いながら読んだ。最後の解説で有栖川有栖が、主人公の鳥井を誰も好きになれない、というようなことを書いていて、たしかにそうだよなあ、と思った。でも、私は鳥井よりも、坂木が好きになれない。

友達思いで、友達を支えるために仕事も選び、いつも気遣ってやって、支えてやって、すぐに泣いちゃう心優しき坂木。でも、私は坂木が優しいとか正しいとかすごいとか思えないから。そんなふうに誰かに依存して生きていて、いいのか、お前??って思っちゃうから。それに対する作者の立ち位置はどこよ??と落ち着かなくなる。

自信がない、すぐに泣いちゃう、弱さ脆さをそのまま良しとするのは「和菓子のアン」にも共通するのかもしれないが。もうちょっとしっかりしろよーっ!!と言いたくなる。この本にも続編があるそうだし、もうちょっと自立するのかしら、鳥井も、坂木も。それを切に願うね、おばちゃんは。

2017/7/10