おだまり、ローズ

おだまり、ローズ

2021年7月24日

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「おだまり、ローズ 子爵夫人付きメイドの回想

ロジーナ・ハリソン  白水社

 

イギリスの執事モノならP・G・ウッドハウス「ジーヴスの事件簿」やカズオ・イシグロ「日の名残り」を読んだことがあったが。これは、イギリス貴族の女主人に仕えたメイドの回想録。
 
第二次世界大戦前後の時代、イギリス最初の女性国会議員であった大富豪のアスター子爵夫人に使えたメイド、ローズ。手先が器用で賢くて判断力に優れ、シニカルで行動力もある女性だ。ウェールズの片田舎の石工の娘が、世界中を旅してみたい、と思ったところから、メイドになることを志し、たどり着いたところがレディ・アスター。気まぐれで辛辣で気の強い天邪鬼の主人に見事に仕え、最後には固い絆が生まれていたという。
 
それにしても英国貴族のとんでもない暮らしぶりには驚いてしまう。大金持ちっぷりには際限がない。でも、豪華な生活の裏には多数の従業員の働きがあったのだとわかる。執事のリー氏のかっこよさにも惚れ惚れする。
 
ローズは女主人のために忠誠を尽くすけれど、彼女の信仰(クリスチャン・サイエンス)には極めて批判的だ。その辺りも包み隠さず書いていて興味深い。
 
失われた英国貴族の贅沢な生活。思い出話だから美しくも面白いのであって、いま、こんな生活している人がいたら、富の再分配を考えろ!!と腹が立ちそうな気もする。でも、面白うございました。

2015/6/29