やった。

やった。

2021年7月24日

44

「やった。」坂本達 MIKIHOUSE

「笑ってコラえて!」という番組で紹介されていた坂本達の本。
4年3ヶ月も有給休暇をもらって世界一周5万5000キロを自転車で走ってきちゃった男

と副題にある通り、MIKIHOUSEで業務レポートに自分の夢を書き続けた結果、入社後四年も経たないうちに4年以上の有給休暇をもらって自転車で世界一周しちゃった記録である。

昔からバックパッカーの著作や雑誌が好きでよく読んでいた。沢木耕太郎の「深夜特急」も、「猿岩石日記」も通読していたから、世界一周する話なんて結構そこらにあふれているのを知っている。交通手段も、路線バスやヒッチハイクやバイクやリヤカーなど、様々なものがあるから、自転車だってそう珍しいことではない。

とは言っても、まだ新入社員でしかない男が有給休暇をもらって世界一周しちゃうというのは、なんというか、本人よりも会社がすごいと思ってしまう。実際には本に会社はほぼ登場しないのだけれどね。

私がこういう本を好きなのは、知ったかぶりをしたり、机上の空論を振りかざすお利口な人たちに比べて、自分の足と眼と耳で全てを確かめずにおられない人たちのほうが、どんなに世の中をわかっているか、真実に近づいているか、心が広く深くおおらかであるかをいやというほど知らされるからだ。つまらないことで他国の人間を十把一絡げに攻撃したがるような人は、どうか世界を歩き回ってほしいと思う。人間は、どこに言っても同じように生活している。笑って、泣いて、怒って、喜んで、食べて、寝て、排泄している。ただそれだけのことを実感として体で知ることが、その人の人生をどれだけ豊かにすることか。世界をどれだけ自分のものとして受け入れる糧となることか。

などと偉そうなことをいう私も、なかなか外に出ていけないのではあるが。

病気に倒れ、炎天下を苦しみながら走り、いつ終わるともしれない坂を登り続け、寒さに凍え、膝を痛め、それでも走り続けた作者の旅は、何も生み出さなかったと思う人もいるかもしれないが、ものすごく大きなものを生み出したのだと私は思う。

若者よ、世界に踏みだそうぜ。いろんな場所を自分の足で確かめておいで。
と、おばちゃんは言いたい。

2015/7/10