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「アベノミクス批判 四本の矢を折る」伊東光晴 岩波書店
この時期にこの本を取り上げるのはどうよ、とやや躊躇する自分がいる。選挙に対する何らかのキャンペーンのつもりは全くない。たまたまこれを読んだのが今だったというわけである。だが、逆に言えば今読んでよかったともいえよう。
伊東光晴は、学生時代に児童文学研究会で子ども向けの「君たちの生きる社会」を読んでたいそう感心した覚えがある。この人の言うことは、信じてよろしい、とそのときに思ったものである。
伊東光晴氏は病気をなさって、今は口述筆記にも頼っていらっしゃるそうだが、筆致は鮮明であり、明晰で論理的な分析をしている。アベノミクスの第一から第四までの矢とされるものを詳細に具体的に分析し、景気浮揚につながらないということを論理的に説明している。
私は経済はまったく畑違いでウンウン言いながら時間をかけて読んだのだが、投げ出す気にはならなかった。丁寧に読めば、素人にもわかるような筋道だった説明だからだ。
私は、庶民にとって生きやすい社会は、社会軸がリベラルにある社会だと思っている。右であれ左であれ、一元的で硬直した社会は望ましくない。そのためには、権力が分散していなければならない。政治権力と経済権力が分かれ、政治から教育は独立し、司法も立法も行政から独立し、何よりも言論界が政権からは独立していなければならない。
(引用は「アベノミクス批判」伊東光晴 より)
2014/11/21