三つ編み

三つ編み

2021年7月24日

60

「三つ編み」レティシア・コロンバニ 早川書房

 

きれいな表紙だ。カウンターで受け取って、そう思った。
 
インドの不可触賤民のスミタ。イタリアの倒産寸前の毛髪加工業をなんとかしなければならないジュリア。カナダのシングルマザーのサラ。全く違う境遇、違う場所、違う立場の三人が、それぞれに苦しい場所から、自分はどうしたいのか、を見つけ、それを貫き、戦う物語。ばらばらの物語が、最後に1つに集結する。
 
不可触賤民のスミタの話が一番苦しい。他の女性もそれぞれに大変なのだけれど、不可触賤民は、生きることそれ自体がすでに苦行でしかない。自分の娘に教育を受けさせたいと願っただけで、さらに大変な苦難に飛び込んでいかねばならない。この世は牢獄に等しい。でも、スミタはそれをなんとかしようと決意し、実行する。
 
理不尽に立ち向かうこと。負けないこと。スミタのような女性が苦しまなくても良い世の中になること。それを願わずにはいられない物語だった。まだ私達の世の中は、本当に未熟で、足りないものだらけだ。でも、だからこそ、小さなことでも見落とさずに、丁寧に、人一人ひとりに敬意を持って生きていきたいと思う。そんな本だった。

2019/7/17