パスタぎらい

パスタぎらい

2021年7月24日

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「パスタぎらい」ヤマザキマリ 新潮社

 

ヤマザキマリはパスタが嫌いなんだそうだ。なんでも、留学中の貧乏時代に、一生分のパスタを食べつくしちゃったからだそうで。イタリアの貧乏学生は、パスタににんにくにオリーブオイルに鷹の爪でちゃちゃっとつくるペペロンチーノで空腹を満たしてなんとか生き延びるらしい。日本の学生のカップヌードルみたいなもんか。
 
ついでにいうと、コーヒーも飲めない、酸っぱい果物もだめ、トマトも好きじゃない、ってそれでよくイタリアで生活できてるなあ、と感心しちゃう。好きなのは、卵、おにぎり、スナック菓子。
 
彼女、シングルマザーでイタリアから一時帰国していた時期、北海道のテレビで、安上がりのイタリア料理を紹介したりしていたそうだ。だから、当時の北海道住民は、ヤマザキマリを見ると、「あら、この人、マンガも描けたのね」と思うらしい。だからか。ラジオなんかの喋りが、実に落ち着いて板についていたのは、経験があったのね。それにしても、パスタとトマトが嫌いで、一体どんなイタリア料理を教えていたんだか。
 
冒険心に豊み、強い心を持ったヤマザキマリだが、実は結構病弱ではあるらしい。世界各国で果敢に地元料理に挑んで、何度も食中毒で倒れ、病院に運ばれているという。
 
キューバの豆と臓物を煮込んだ郷土料理
南太平洋の村で出された蝙蝠のシチュー
モスクワの謎の小骨だらけのネズミ色の得体の知れない肉の煮込み
シリアの羊のどこの部位だかわからん臓物シカゴの一口だけで千カロリーはありそうなチーズピッツア
チベットの農家で出されたヤクのバター茶十杯
 
などなどを胃袋に放り込み、胃袋の外交能力を最大限に発揮し頑張ってきたが、結果としてピロリ菌の巣窟となってしまった、という。
 
ちなみにこの本の最後に、兼高かおるさんとの対談の中で絶句するしかないアフリカ料理の話が載っていた。あまりのことに、ここに書くのは差し控えるが、どんな料理が知りたい人は、ぜひ、この本を読んでね。とある料理に入れられた、スペシャルな調味料のお話。
 
 
 

2019/6/17