ぼくは眠れない

2021年7月24日

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「ぼくは眠れない」椎名誠 新潮新書

 

椎名誠って、アウトドアでパワフルでマッチョに見えるけど、実は案外繊細な人なんだということは知っていた。若いころにちょっとうつを病んだことも知っていた。竹を割ったような性格・・・ではないとわかっていた。
 
先日、椎名誠作家生活35周年記念イベントがあったので行ってきた。そこでこの本を売っていて、サインと写真をお願いできた。椎名さんは、なんだか元気が無い・・・というより、表情に乏しい感じがして気になった。写真を取るときも、笑顔を作るのが面倒なご様子だった。
 
作家になるきっかけを作ったご友人二人との対談があったのだけど、話がこれから・・というところでいきなり「じゃあこのへんで」とぶつ切りにされて戸惑ってしまった。大丈夫か、椎名誠。
 
そんな椎名さんは35年間不眠に悩んでいるという。不眠になったきっかけや、いきなり見知らぬ女が押しかけてきたエピソードなどは興味深かった。
 
椎名さんは、バリ島では自然な深い眠りを得られるのだという。夏目房之介も同じことを書いていたのを思い出した。たしかに、バリの空気は心を穏やかにするよなあ・・・。
 
椎名さんが定期的に雑魚釣り隊の面々とキャンプに出かけるのは、気持ちの良い眠りを求めてのことだということも書かれていた。これもわかる気がする。気のいい仲間の会話や、なにも縛られない時間と空気の中で、完全にリラックスできたときに、深い眠りが得られるのは、よくわかる。
 
わたしもちょっとした事で不眠に陥りがちな人間である。不安にとらわれるともう眠れない。こんなことがあったから、ああ、今夜はもう眠れないのだなあ、と絶望的な気持ちになることがたまにある。そういう日は、本当に眠れない。椎名さんの書いていることはよーく分かるのである。
 
タモリが前に言っていた。眠れない、眠れないというけれど、眠れないなら、寝なければいいじゃないか、と。そう言い切れるタモリは強いなあ、と思う。小心者は、寝ないでいると、どうなってしまうか、に対する恐怖に目を向けないことが難しい。寝ないと大変だあ、と思うからこそ眠れなくなる。執着するから逃れられない。人間ってめんどくさい。
 
なんてことを、読みながら考えた。この本自体は、実体験を書いている部分は面白いけど、全体にはとりとめがないというか、まとまりがつかないような本ではあったのだけれど。

2014/11/21