ドミトリーともきんす

ドミトリーともきんす

2021年7月24日

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「ドミトリーともきんす」高野文子 中央公論社

 

「絶対安全剃刀」に出会ったのは、大学生の時。あの衝撃は、忘れられない。本の話が出来る友人という友人に勧め、漫画は文学を超えたのではないか、と真顔で話し合ったものだ。
 
高野文子は寡作の人で、この作品も十年以上ぶり。新聞広告で知って、数日思いを熟成させたものの、大きい本屋に行ってしまったら、もう買わずにはいられなかった。いや、本当は現物を見てから考えよう、と思っていたのだけれどね。新宿紀伊國屋のコミックコーナーで店員さんに、高野文子さんの新作はどこですか、と尋ねたら、ちょっとお待ちください、と言われたきりしばらく待たされて、一体どうなっているの・・・と思っていたら、息を切らせながら戻ってきて、渡してくれた。どうやら全然別の階にあったのをわざわざ取りに行ってくれたらしい。なんだか申し訳なくなって、そのままレジに並んでしまった。まあ、最終的には買う気だったからいいんだけど。
 
読んでみたら、なるほど、これはコミックコーナーに置く本じゃないのかも、と思って納得。漫画ではありつつ、文章の占める割合が大きく、内容は朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹の科学的な話題が中心になっている。
 
ちょうどつい最近、牧野富太郎の牧野記念庭園記念館を訪ねて、彼のみごとなスケッチに感心したばかりだったので、興味深かった。
 
それにしても、高野文子さんて、不思議な人だ。毎回、ぜんぜん違う毛色の本を出していく。私は「絶対安全剃刀」に一番衝撃を受けたなあ。

2014/10/1