虹の家のアリス

2021年7月24日

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「虹の家のアリス」加納朋子 文春文庫

 

先日、急にお通夜に行かねばならなくなって、喪服を着たあと、あわてて電車内で読む本を探した。小さめのフォーマルバッグに入るサイズの本がこれだけだったので、ひっつかんで出かけたらシリーズ物の二作目だった。一作目は夫が読んでいる最中だったらしい。でもまあ、一話完結物が集められているし、途中から読んでも苦しゅうない。車内とお通夜の待ち時間に重苦しい雰囲気をやり過ごすには十分な役割を果たしてくれた。
 
会社を依願退職して憧れの探偵業を始めた中年男と、彼の娘の家に居候している可愛らしい助手の安梨沙の事件解決モノ。と言っても人死は出てこないし、人間関係が基底にある、のんびり穏やかな事件ばかりなので安心して読める。
 
大谷博子がこれは家族の物語である、と指摘していたが、まさに正しい。また、誰かが一歩を踏み出すまでの物語でもある、というのにも納得である。巻末の大谷博子の解説も含めて、なかなかに楽しい一冊だった。

2017/3/3