大草原の小さな家

大草原の小さな家

2021年7月24日

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「大草原の小さな家」 ローラ インガルス ワイルダー 福音館書店

テレビでやっていたドラマをちらほらと観たことはありました。でも、ちゃんと読んだことはなかったのです。「クリスマス人形のねがい」を読んでしまっても、まだ時間があったので、今度はこれに手を出してみました。題名に覚えがあったので、これにしたのですが、実は二巻目だったのですね。しまったなあ。

大きな森の家を出て、インガルス一家が大草原に馬車で乗り出していくところから、物語は始まります。まだ、開拓されていない草原荷馬車を止めて、そこで家を作り、井戸を掘り、家具を作り、畑を作っていく様子が描かれています。

なにもないところから、なんでも作っていっちゃう父さんは素敵です。そんな父さんを温かく支え、子供たちを安心させてくれるかあさんも、素敵です。これは、アメリカの理想の家族なんでしょう。

その一方で、草原は、本当はインディアンの土地なのです。インディアンたちは、あちこちにキャンプをはり、狩猟をして暮らしています。インディアンの小道が、ローラたちの土地にも通っています。

インディアンは、ときどき、いきなりローラの家に現れては、食事をもらったり、嗅ぎたばこを奪って行ったりします。かあさんは怖がっているし、インディアンを非難するけれど、とうさんは、そうではない。いいインディアンもいる、もともとここはインディアンが住んでいる土地だった、といいます。でも、その一方で、インディアンは、開拓者が来れば、西へ西へと移住していくものだ、ともいうのです。

物語の最後には、インディアンたちの仲間割れが起こります。勇敢なインディアンの棟梁が、西へ向かうことを選択して去っていきます。けれど、政府は、その土地をインディアンに明け渡すことを決定し、インガルス一家は、またそこを出ていくことになるのです。

物語には、表と裏がある。開拓者の側から描かれた美しい物語も、迫害され、収奪されるインデイアンの側から描かれたら、まったく別の物語になるのだと思います。どんなに善良で勇敢で美しい家族も、インディアンの平和な土地に勝手に入り込んで、耕し、切り開いて自然を脅かす侵略者なのかもしれません。どちらが正しいのか、どちらがその土地を支配すべきなのか。それを決めるのは、一体誰なのでしょう。

なんだか、いろいろなことを考えてしまいました。あのころは、ローラたちは楽しそう、幸せそう、とだけ思ってドラマを見ていたのになあ。

2012/10/6