夜をぶっとばせ

夜をぶっとばせ

2021年7月24日

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「夜をぶっとばせ」 井上荒野 朝日新聞出版

夫のDVとか、借金癖とか、人妻の出会い系サイト中毒とか、そんなものはどこか遠くのことのように思っていた。でも、ちょっと主婦サイトを覗いてみるだけで、実は、そんなものはごく身近にゴロゴロしているのらしい。そうなのか?そうなのか!と思いながら、そんな書き込みを眺めていたのだけれど、この本を読むと、なるほど、何の違和感もなく、気がついたらそうなっていた、という世界がある。なんの不自然もなく、夫は妻を殴り、レイプし、妻は出会い系サイトにはまっていく。

と書くと、やたらと通俗的な小説のようだが、そんなことはない。フワフワと、知らないうちに知らない場所に連れて行かれて、私は今どこにいるんのだろう?と思うような物語だ。誰もが、気が付かないうちに、知らないところに行ってしまう。そして、見つからない。

読み終わって、なんだか不安な気持ちになってしまった。でも、それは、私には遠い不安なのかもしれない、と同時に思う。

2012/10/13