日本人の恋びと

日本人の恋びと

2021年7月24日

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「日本人の恋びと」イサベル・アジェンデ 河出書房新社

 

作者は、軍事クーデターで暗殺されたチリのアジェンデ大統領の姪である。見返しに「精霊たちの家」が絶大な反響を呼ぶ、とあるが、読んだことがない。読まなきゃ。
 
この本は、いわば「嵐が丘」である。こちらの「ヒースクリフ」はあんなに激しい人ではないが。舞台は老人ホームだし、作者も72歳の作品だというが、なんとみずみずしい物語なのだろう。
 
第二次世界大戦中のユダヤ人虐殺や、アメリカにおける日本人強制収容など、主人公は歴史に翻弄される人々である。彼らを支える若者も、自分ではどうしようもない現実の犠牲者であったりする。傷つき、苦しみながらも、力強く前を向いて生きる人々。どんなに苦悩していても、人生は美しいし、素晴らしい。
 
様々な問題を詰め込み過ぎではないかと思うほどに詰め込み、あちこちに風呂敷を広げて、これをどうするのだと途方に暮れるが、最後にはすべてを包み込んで物語は終わる。老いても、愛情や友情は色あせない。主人公とその周囲の人々を、みんな好きになった。
 
とっても、おすすめ。

2018/6/1