殺人出産

殺人出産

2021年7月24日

83

「殺人出産」村田沙耶香 講談社

 

ごくまれに、「読むんじゃなかった・・・」と思う本に出会ってしまうのだが、どうやらこれはその類の本だったらしい。
 
近未来の話のなのだが、出産は人工授精によるものだけになり、人口は極端に減ってしまった。そこで、殺人出産というシステムが生まれた。十人生んだら一人殺していいという制度だ。殺したい相手がいたら、「産み人」申請をして病院に入り、十人生む。そうしたら、殺したい相手を申請すれば国がその人を捕まえて、二人っきりにさせてくれる、好きに殺させてくれる。殺された人は、尊い命を生み出すために死んでくれた人として尊ばれる。それがその時代の「正しさ」である。
 
読んでいて、どんどんいやになってきたのだが、途中でやめるともっと後味が悪そうで、がんばって最後まで読んだ。でも、だめだった。短編がほかにも数編入っていて、そちらで何らかの解決が得られないかと読んだのだけれど、恋愛は二人じゃなくて三人でするもの、という新しいやり方や、徹底的に性を排除した「清潔な結婚」や、「死」がなくなってしまったので、余命を自分で決めなくちゃならなくてたいへん、という話だったりして、そりゃ目新しくて奇想天外ではあるのだけれど、ぜんぜん楽しめなくて参った。
 
これを読んだのは、U-zhaan(ユザーン)のライブに向かう間、そして演奏が始まるのを待っている時間だった。気持ちがぐちゃぐちゃになってしまったところに聞こえるU-zhaanのタブラの音色はなんとも広くつきぬけて、心がふんわり乗せられて、どんどん眠たくなってしまった。退屈してるんじゃないんだけれど、気持ちよすぎて眠りこみそうだった。U-zhaanに助けられたなあ。

2015/9/30