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「ダルちゃん １・２」はるな檸檬 小学館
漫画は買わないと決めたのに。借りるかあるいは電子書籍にするぞ、と心に誓ったのに。気づいたら、買っていた。近所の大型書店が撤退すると聞いた。お別れに行ったら、「ダルちゃん」が平積みになっていたのだ。ここで買わんでどうするか！とちょっと思ってしまった。書店、頑張れ、と言いたい私。買うと置く場所がなくなるくせに。どうする、この矛盾。
まあでも買ってよかったかな、と思う。これは買いですよ、奥さん。とりわけ「泣き虫チエ子さん」の後だと余計に身にしみる。チエ子さんが、言葉にせずに、空気や雰囲気で物事を進めていく人だとしたら、ダルちゃんは、そういった戦法に疲れ果てて、本当の思いを本当に言葉にすることに向き合い始めた人だ。そっちのほうが、私はずっと好き。
ダルちゃんは、本当はダルダル星人なのだけれど、ばれないように擬態して生きている。人間として認められるように、人に合わせて行動しているうちに、自分が本当には何を考えているのかすらわからなくなってしまっている自分に気づく。そんなとき、同じ様に、人に合わせて、みんなみたいに生きようとして傷ついた先輩から詩集をもらう。そこから、ダルちゃんは徐々に変わっていくのだ。足の悪い青年との恋、そして、彼との別れ。本当の自分の言葉を見つけようと、ダルちゃんは、だんだん自分がダルダル聖人であることを隠さなくなっていく。すると、いるんだな、世間のあちこちに、ダルダル聖人が密かに生息している。
いやあ、説明すると面白くないな。この漫画の切実さ、苦しさ、そして明るさは、やっぱり読まないとわからない。これを読んで、「私のことを書いている」と思う女性はすごく多いと思う。この漫画に救われる人も、とてもたくさんいると思う。逆に、一体何を書いているんだ、これは、と思う人もいる。あなたは、そのどっちだろう？
2019/4/10