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「まく子」西加奈子 福音館書店
何の予備知識も先入観もなしに読んだ。表紙を見て、ああ、このお猿さんがまく子ちゃんなのね、なんて大間違いだった。最初の一行目に書かれているから種明かししちゃうと、「まく」のが好きな子なのね。水をまいたり、砂をまいたり。
西加奈子の小説は「さくら」と「舞台」しか読んでいなくて、どっちも、そんなに夢中になったわけじゃない。が、なんか気になる作家ではあった。根底に流れる他者への信頼感のようなものには共感するところがあったからかもしれない。
この物語には、嫌な人は出てこない。途中、放火があったりもするんだけど、放火犯すら悪い人とは思えない。変な人はいっぱい出てくるけれど、悪いやつじゃない。そういうところが、好きだ。
小学校の高学年くらいから、人は、だんだん体が変わってきて、大人になっていく。その不安や苦悩と、誰かを好きになるということ、そして、いつか死んでしまうということ。そういうことを、ちゃんと捉えて考えて描いている。まっすぐだなあと思う。
それで、どうまとめるの、どう終わらせるの、と思いながら読んでいたら、あらまあ、こんな風に終わらせるのね。そうか、この本、福音館だったっけ、とあとから気がつく私なである。ってどういうこと？と思われるかもしれないが、ネタバレになるから書く訳にはいかない。意外な展開だった、とだけ。
ちなみに、「アメトーク！」でピース又吉が読書芸人大賞にノミネートしていた作品でもある。
2016/12/16