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「わたしのぼうし」佐野洋子 ポプラ社
わたしは、あかいはなのついたぼうしをもっていた。だのに、きしゃのまどからそれをとばしてしまった。あたらしくかってもらったぼうしは、わたしのぼうしのようではなかった。
子どもの頃、大事なものがあった。おそろいでべつの人がもっていても、あきらかに、わたしのものは、わたしのものでしかなかった。
大事にしていたものがなくなった時の悲しみ。あたらしいものが、じょじょに自分のものになっていく感覚。
表紙絵のうしろむきのおにいさんは、佐野洋子の亡くなったお兄さんかもしれない。
2014/10/26