ご先祖様はどちら様

ご先祖様はどちら様

2021年7月24日

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「ご先祖様はどちら様」 高橋秀実 新潮社

この人の作品は何冊か読んでいる。「からくり民主主義」「素晴らしきラジオ体操」「おすもうさん」など、どれもいっぷう変わった、膝の力が抜けるような、不思議な味わいのある作品ばかりである。

この本も脱力感あふれていて、すばらしい。自分のルーツを追って、ご先祖様を探して歩くのだが、結局、よくわからないまま、コトは進んでいく。それでいいんだ、って思えてくるからすごい。

母の母の母の母の長男の次男の長男の長男、という遠い親戚に会いに行った時の話。彼の父の従兄弟、つまり作者の母の母の母の母の長男の娘の息子と、作者がそっくりなんだそうだ。(なんだそりゃ。)その親戚は、なぜか、壁一面に掛け時計をコレクションしている。そして、その一族は、仕事でちゃんと食えていなくても、なぜか将来のことなんか心配しないで、奥さんに怒られながらものうのうと暮らし、でも、やるときはやる、んだそうである。作者そっくりだ。

一方、これまた遠い遠い親戚らしい大学教授の立派な家を訪ねると、その人の祖父はいわゆる「遊び人」でろくに働かず、ふとしたきっかけであらゆる学校の「百年史」を集めることに没頭したという。遊び癖と、訳の分からないコレクション癖。一族のDNAではないか、これは!

そうやって、遠い親戚をたどっていけば、どこかに自分そっくりな人がいて、似たような変な癖があったりするのだろう、と思うと、なんだか楽しくなってくる。うちの夫の家系は、眉の形がみんな同じで、法事で親戚が揃うと、眉だけ見て笑いが止まらなくなりそうなほどだ。この眉も、全国各地に散らばって、夫みたいな人がたくさんいるのかと思うと、楽しい。

辿って行くと、皇室の血が混じってるかもしれない、とおじさんにで電話したら「そりゃたいへんだべ。もっとていねいに、ございます、とかしゃべんなければなんないべ。」と言われたそうだ。

それにしても、桓武平氏だと思っていたら、一方では、清和源氏の可能性も出てきたりして。うちの父方は、平氏の流れだというし、母方は豊臣だって行ってたけど、いったい、どこまで本当なんだろうなあ。

2012/10/16