ルポ

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2021年7月24日

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「ルポ 虐待 ー大阪二児置き去り死事件

杉山 春  ちくま新書

2010年夏、三歳の女児と一歳九ヶ月の男児の死体が大阪市内のマンションで発見された。二人の母親である23歳の女性は風俗店で働き、男友達と遊び歩いて子どもたちを部屋の中に閉じ込めたまま放置していた。

なぜ、そんなことが起きたのか。子どもたちはどうして死ななければならなかったのか。それは母親だけの罪なのか。関係者の証言を拾い集め、母親の半生をたどり、虐待がどのように起きていったかを分析した本。

子供を育てることが、どんなに大変なのか、私は実際に体験するまで知らなかった。たぶん、みんなそうなんだと思う。放っておいても子どもは育つ。そう言われるし、そう思っている人は多い。だけど、幼児が一人で何ができる?小さな子を抱えて、母親一人で、どれだけの重荷を抱えなければならないのか。現実に出会った時、新米の母は愕然とする。

私は、幼児を虐待した母親を居丈高に避難できる母親ではない。息子の夜泣きに疲れ果ててベランダから放り投げてやろうかと思ったことがある。ワガママな娘に殴ってやろうかと思ったこともある。そんな時、私には助けてくれる人がいた。でも、もし、あの時、私がひとりぼっちだったら?

この母親は、年若くして子どもを産み育てながら、家族会議で離婚を決定され、子ども二人を渡された。そして、家族には頼らない、仕事をしっかりする、連絡はいつでも撮れるようにする、などの誓約書まで書かされている。金銭的援助も一切なく、一人でしっかり育てることだけを求められ、しかも連絡を取るという管理だけはされる・・・・。決して幸せに大事に育てられたわけでもなかった彼女が、いきなり子ども二人と世間に放り出されて、一体どこまで頑張れたというのだろう。

周囲には、彼女を助けることができる大人がたくさんいたはずなのに。責任という言葉で、子どもは彼女一人の手に渡された。そこに、どんな愛情があったというのか。

懲役三十年が決まった彼女は、たぶん、今の私と同じ年くらいに社会に戻ってくる。その時、彼女はどんな人生を見つけるのだろう。
2013/12/17