三田さんぽ その2

三田さんぽ その2

2021年7月24日

さて、冷え切った我々。
これからどうしようかと言い合いながら、とにかく隣の「三田ふるさと学習館」とかいう所に入ります。ここは、懐かしい昭和の生活が見学できる場所。チャンネルをガチャガチャまわすブラウン管テレビや、黒いダイヤル式電話、グルグルと手巻きで絞る洗濯機など、実は私たちには懐かしいものがずらっと並んでいます。これって、小4くらいで勉強するらしい。うちの子たちもやってたなあ。でも、我々には全然珍しくないので、トイレだけお借りして、すぐに出てしまいました。

それから、三田城址という場所に行きましたが、ここが本当に城跡かどうかも定かじゃないらしい、ちょっとした空き地でした。ふうーん。

夫は、最近人気の、とあるパティスリーに行ってみたい、といいます。そこって、ここから近いの?と聞くと、延々歩いて行ってもいいし、三田の駅まで戻って、私鉄に乗って、そこから歩いてもいいし、ここからタクシーで行ってもいいし、とのこと。では、三田の駅まで歩きつつ、もし、タクシーに会ったら乗ることも視野に入れて、と決定。てくてく歩いて、結局、タクシーには全く会わずに、駅に到着しました。

神戸電鉄に乗ります。そんな電車が通っていたことも知らなかった私。有馬口の方まで続いてるんだよ、と言われて、ああ、あれか、とちょっと理解できました。

「神鉄道場」という駅で降ります。やたらと寒いので、タクシーがあったら乗ろうか、というのですが、タクシー乗り場がない。「三田ホテル」というシティホテルがあったのですが、タクシーがそこにもいない。建物ばかり立派で、人の気配がない不思議な街です。映画のワンシーンみたい。地図を見ると、歩けない距離じゃない、というので、歩き始めます。

こっちのほうがわかるかな、と、地図を見ながら、なんだか荒涼とした川沿いを歩きます。

川風が吹き荒れて、体の温度を奪って行きます。寒いよー。坂をどんどん下ると、左側は崖のように高くなっています。ものすごく上を大きな橋が通っていて、その向こうには噴水が見えてきました。うー、あの飛沫が当たったら、たまらんぞ。
「あの橋を左に行った方向なんだと思うなあ」
と、夫がのんきに言います。おいおい、あの高い橋の場所までどうやって登るのさ。

「まあ、なんとかなるさ。」
と、橋を見上げながら、くぐってしまいました。地図を見ると、やっぱりこのあたりで左折せねばならない様子。前方を見ると、左側に上がれそうなくねり道があります。そこを登って行くと、土手にコンクリの坂道がつけられていて、かなり急ですが、登れなくはありません。ふうふう言いながら、登っていくと、いきなりただっぴろい空き地に出ました。これから宅地造成でもしそうな、ただただ広いだけの何もない場所。そして、ぐるっと周りを金網で囲ってあります。

どこから抜けられるんだろう、と空き地の端をずっと歩いて行くと、おお、金網の向こう、広い道路の向こう岸には、目指すパティスリーがあるではありませんか!しかし、金網は、どこにも出口がない!!もう一度、川沿いに戻って、別の道を探す他に、手立てはなさそうです。・・・なんて思ってたら、夫、「ちょっと持ってよ」とカバンを私に預け、金網をよじ登ってしまいました。グラグラしながら乗り越え、、すとん、と下に降りました。

いやいや。あなたは乗り越えたけど、私は・・・。と言ってる場合じゃないぞ、これは。と、私もバッグを金網越しに夫に渡し、ヒイヒイと金網をよじ登ります。子ども時代、こんな金網、いくらでも乗り越えたんだがな。こんなに怖かったかな。乗り越えるとき、ちょっとひねったらしく、降りてから肩を回したら、ボキッといって、変な感じが治りました。やれやれ。乗り越えて、道を渡ってから撮影したのが、これです。「入らないでください」と張り紙が貼ってありましたが、我々は、入ったのではなく、出たのです。

それにしても、なんにもない場所です。ひとけも余りありません。ところが、いざパティスリーの場所へ行ったら、なんと大勢の人が並んでいるではありませんか。いったい、どこから湧いて出たんだ?

裏手には、大きな駐車場がありました。そうか、遠くから、みんな車で来るのね。クルマのない生活に慣れてしまっている我々には、こういう感覚が全然ありません。だからって、金網をよじ登ってくるとはお店側も思ってないでしょうけれど。

「エスコヤマ」というパティスリーです。ケーキ屋さんの他に、パン屋さんとチョコレート屋さんと、工場があって、この日は予約したケーキ専門の受け渡し場所も別に用意されていました。

ケーキ屋さんの行列に、我々も最初ならんだのですが、そもそも夫はここのチョコレートを買いたいと思っていたとか。チョコレート屋は別みたいだ、というので、駐車場の誘導係に尋ねると、やっぱり別の建物です。もしかして、客に入って欲しくないんじゃないか、と思うほど、ひっそりと隠れるようにチョコレートショップのドアがありました。

そこを開けると、さっきケーキ屋さんとは比べものにならないほど静か。二組ほどしかお客さんがいません。結構なお値段の、でもとても美味しそうなチョコレートが並んでいました。夫が食べたがっていた胡麻のチョコレートや、大豆醤油のチョコ、もちろんフランボワーズとかカカオの定番チョコも含めて、いくつか包んでもらいました。

せっかく来たのだから、ケーキも欲しいけれど、こんなに並んでいるのでは・・と思っていたら、ロールケーキや生ケーキ、プリンなどは並ぶけれど、焼き菓子はすぐに入れます、とのこと。では、焼き菓子を、と店内に入り、素朴な紅玉のアップルケーキを買いました。

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外へ出ると、雪が降っています。とんでもない寒さです。さて、どうやって戻りましょう。また、金網を登るのかね?道はあくまでも広く、人気は全くありません。道の向こう岸には、だれもそこから乗ったことがないようなバス停がぽつんと立っています。
「二時間に一本とかいうバスじゃないの?」
と言いながら、時刻表を見に行ったら、一時間に二本しか無いバスですが、なんと今から十分後には来るというじゃありませんか!もう、この寒さの中、歩く気にはなれません。というか、どんどん雪がひどくなってきて、これじゃ遭難するよ・・。あまりに人気がなくて、実は廃線になっているのではないか、と不安になりました。しかし、これだけ車通りもないと、渋滞なんかしないからか、時刻ぴったりに、バスが来ました。中に乗っていたお客さんは二人だけ。そこから、終点のJRの新三田駅という三田駅のおとなりの駅まで乗って行きました。

三田牛が有名だし、お昼はステーキでも食べられるかな、と思っていたら、新三田の駅前には、全く、何もありません。お店がないのです。仕方ないので、お腹をすかせたまま、我々の最寄り駅までJRに乗って行きました。途中でいくつもトンネルを超えて、近いといっても遠いのね、山に行ったのね、と思いました。

前から一度行ってみたかったインド料理屋に行って、カレーとタンドリーチキンとナンを食べて、帰りました。温かいのが、何よりのごちそうでした。

チョコレートとアップルケーキは翌日のクリスマスイブにいただきました。素朴で素晴らしく美味しいお味でした。血糖値の神様、ごめんなさい。いっぱい冒険したから、許してね。

2012/1/5