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「八幡炎炎記」村田喜代子 平凡社
「人間の樹」同様、うっかり読み落としていた村田喜代子さんの作品である。「鍋の中」でなかなか複雑な親戚関係をお持ちなことは知っていたが、それをもっと細かく描き出している。作者本人の人生を振り返りつつの人間ドラマ。これはまだまだ続くだろうなあ。大河ドラマになりそうだ。
登場人物一人一人が生きているかのようだ。悪い奴とかいい奴とかではない。誰もが持っているどうしようもなさ、気がつくとずるずると引きずられてしまう感情の波。人間臭い心の中が淡々と描き出されていて、つい同化してしまう。女癖の悪い仕立て屋の男なんて、本来、大っ嫌いなタイプなのに、なんかわかってしまう、好きにさえなってしまう。
人間を描くとはこういうことだなあ、と思う。温かいわけでも冷たいわけでもない。淡々とすべてを受け入れて、あるがままに静かに見据える眼。村田さん、すごい。
人生が終わりに近づいているのをお感じになっていらっしゃるのか。今のうちに、集大成として描いておこうと思っていらっしゃるのか。まだまだ先は長い。どうか描ききってほしい。続きが読みたい。どきどきする。
2017/3/25