はじめて学ぶみんなの政治

はじめて学ぶみんなの政治

2021年7月24日

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「図解 はじめて学ぶみんなの政治」浜崎絵梨訳 国分良成監修 晶文社

 

子ども向けの本だが、大人に読んでほしい。というか、いま、総理大臣をやっている方に、読んでほしい。「法による支配」の対義語が何であるかを答えられなかったのは、法とは何か、なぜ法が作られたのか、その根本を知らず、法や政治の歴史的変遷を認識していなかったからだろうから。
 
この本は、ごく丁寧に、当たり前のことだけが書かれている。当たり前なのに、ないがしろにされている事柄に気づかせてくれる。歴史を学ぶのは何のためなのかも、これを読むとよく分かる。私達の先祖が長い年月をかけて少しずつ積み上げてきた、私達が平和に幸せに暮らすための叡智(まだこれからもっと発展するだろうけれど)を、順を追い、段階的に教えてくれる。
 
政治というと遠くて自分には手の届かないシステムのように感じてしまうけれど、例えば学校のクラスの中にも政治はある。遊び仲間の中にも政治はある。鬼ごっこの鬼決めをどうするとか、サッカーのポジションをどうやって決めるとか、掃除当番の役割をどう割り振るとか、それを決めていくのも政治だ。「責任をもつのはだれ?」「権限を持つのはだれ?」から説き起こして、「政府ってなんだろう?」と説明が進んでいく。
 
私は転勤族の娘で、何度も転校を経験した。新しいクラスに行くと、そこには必ずボスと言うか、物事を決定し、皆がそれに従うような人間がなんとなくいた。それは、学級委員とはまた別の存在だった。ボスに睨まれて、集団無視にあったこともあるし、妙に気に入られて、何故か助言を求められる立場になっていたこともある。
 
なんでみんなこの子のいうことを聞くのだろう、と私は不思議だった。別に、言うことを聞かないと殴られるわけじゃない。席を閉め出されるわけでもない。給食を貰えないわけでもない。しかも、威張っている子が、必ずしも常に正しいわけでもない。じゃあ、なぜ?といつもいつも思っていた。
 
政府の権限はどこから来るんだろう、というページがある。その頃の私に見せてやりたい。政府のリーダーになる、いくつかの理由が並べてあった。
 
その一族が何百年も統治してきた、その先祖がこの街を作った、親が王だったのであとを継いだという「伝統」。選挙などで最も多く票を集めたものがトップに立つような、いわば「人気」。国王が地上に表れた神の分身であるという「神から与えられた権限」。物事をよく理解し、最高に優秀なものが君臨する「優秀な人材」。このような社会の大多数の人から支持が得られるような正当な理由があってはじめて公式な政府となる。
 
私の転入したあるクラスでは、先生に一番贔屓されていたり、親がPTA会長だったりする子がボスであることもあったし、そこののお兄ちゃんやお姉ちゃんも常にリーダー格であるため、結果的にその子がボスになることが黙認されていたこともあったし、いろんなことを知っていてみんなを楽しませる人気者がボスであることもあったし、暴力は振るわないけど、すごく怖い雰囲気を醸し出す子がボスであることもあった。まあ、そういうことだ。上記のように整理し、分類されると、スッキリする。さまざまな要因のもとに、ボスは決まる。皆がいいなりになる、ということが「権力」である。
 
今の政治システムがどの様に築き上げられてきたのか、どんな試行錯誤があり、どんな理想があり、どんな失敗があったのか、を順を追って知ると、今、私達がどうあればいいのか、がなんとなく見えてくる。これが、大事だ。総理、聞いてくださいよ。
 
いろいろの立場があり、思想があるけれど、大事なのはきちんと話し合うことだ。どうすれば相手の気持を傷つけずに説得力のある議論をすることができると思う?
 
相手の人格を傷つけない、事実に基づいた意見を言う、人の感情に訴える、間違った情報に基づいて議論しない、カッとしたり、怒鳴ったりしない、時には相手の意見を素直に聞き入れる。
 
長い歴史の経過を見、今の政治のシステムを理解した上で説かれる上記の議論のやり方は、非常に正しく説得力がある。とても大事なことが、すっきりと腑に落ちる。
 
子供にも読んでほしいが、大人にも、とりわけ今政治に携わっている人みんなに読んでほしい。反省してほしい。とりわけ、総理、あなたにね。読まないだろうなあ。読書も、お勉強も苦手そうだからねえ。
 
 

2019/3/11