鏡の背面

鏡の背面

2021年7月24日

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「鏡の背面」篠田節子 集英社

「ある男」そっくりじゃん、とまず思う。事故で亡くなったカリスマ的女性指導者は、実はその名の人ではなかった。いつ、どこで誰とすり替わったのか。それを追う物語。「ある男」のほうが、本としては二ヶ月遅い出版だけど、いったいどっちが先なのか。こういう偶然って時々あるよね。グリムウッドの「リプレイ」と北村薫の「スキップ」も似たようなもんだったし。

それはともかく。これは、「読書は人を育てる、変える」という物語でもある。後半部分でいきなり「長くつ下のピッピ」がでてきたのには驚いたね。「ナルニア国物語」もでてきた。一瞬だけだけどね。読む本が、人を変える、ということに私は賛同するし、そこにリアリティも感じるけれど、他の人はどうなんだろうね。どう思うんだ、みんな。

DVや虐待にさらされた女性のための自助施設。そこに集まる女性たちの姿は、本物だと思った、私は。世の中には、こんな風に生きづらい女性たちが大勢いる。どこにでもいる。最近あった虐待事件も、そこで逮捕された母親も、全然不思議ではない。どうしたら、何ができるのか、と思う。思いながら読む。読書は人を変える、ということを、考えながらも。

2019/2/14