風と共にゆとりぬ

風と共にゆとりぬ

2021年7月24日

167

「風と共にゆとりぬ」朝井リョウ 文春文庫

朝井リョウは「桐島、部活やめるってよ」しか読んだことがない。それも、映画の後に読んでだので、映画の感想がオーバーラップして、ちゃんと読めた気がしない。だから、ほぼ「初めまして」気分である。

感想は、馬鹿である。こじらせている。なにもそこまで。とはいえ大変ね。といったところだ。ただただ、笑ってしまった。

レンタル彼氏として働きたい、という発想から始まって、知り合い女子と二人でレンタル彼氏を発注することになる。その女子と朝井が兄弟で、地方の実家の親を安心させるため、姉が東京にいる弟に彼氏を紹介する、というストーリーでレンタル彼氏を二人がかりで騙すのである。何故、そんなことをせねばならない?しかも、その企みは、ただ朝井を追い詰めるだけでしかない。

とある公演の差し入れのため、オクラが好きだというその人のため、「同化体験五色ネット(オクラ模型つき)」を入手してプレゼントする。ネットと中身の色を同化させることで中身の色合いをより美しく見せる・・という実験のため(スーパーなどでオクラを売るときにネットに入れてあるでしょう?あれです、あれ。)の一式を差し入れられて、喜ぶアーティストが居るだろうか。

講演が苦手なので、同業の作家といきなり歌って踊る、とか。高校生を励ます会に作家として参加して「そうなんだ」しか言わない、とか。

そして、最後は「肛門記」である。痔瘻を患い、手術して回復するまでのつらい日々をリアルに描いてある。そりゃつらそうだけど。身内に痔主がいるので、辛いのもよく知っているけれど。しかも、再発してるらしいから気の毒だけど。

病院の待合室で読んで、何度か笑いが漏れてしまって、焦った。静かな待合室でブフッと吹き出す私の声が、やけに響き渡るのが、わかった。
2021/2/20