和菓子のアン

2021年7月24日

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「和菓子のアン」坂木司 光文社文庫

 

週末は、夫と近くのJR駅付近を散歩することが多い。たいていは、行きつけの豆屋でコーヒーを飲みながらお気に入りの銘柄を焙煎してもらい、日本酒の銘柄の揃った酒屋で数本の酒を書い、翌朝のパンを買ってだらだらと帰るのだが、先日はきょろきょろしながら夫が「この辺に和菓子屋ってなかったっけか」というのである。あるよ。ちょっと行ったところに塩大福のうまい店があるし、その先にももう一軒あったような。でも、なんで和菓子屋?と尋ねると、原因はこの本だという。読むと和菓子が食べたくなるから、いいから読んでみな、と。で、読んでみた。
 
私はもともとそんなに甘いモノ好きではない。ましてや和菓子は得意ではない。が、なるほど、読んだらちょっと食べたくなった。食べたいのもさることながら、丁寧に作られた季節の和菓子を買ってきて、まじまじと眺めてみたい気持ちになった。
 
杏子という主人公が、高校を卒業して和菓子屋のアルバイトを始める。ふっくら系女子の彼女はなかなかのコンプレックスの持ち主なのだが、和菓子の扱いは丁寧だし、食べ物への愛にあふれている。彼女が勧めると和菓子が美味しそうに見えてくる・・・と書いてあるのだが、本当にそのとおりで、和菓子が食べたくなるわけである。
 
いわゆる日常の謎ミステリなので、訪れる客や周囲の人間のちょっとした行動に垣間見える謎が上手に解かれていく。と共に、和菓子のアンこと杏子もだんだんに成長していくのだ。
 
美味しそうで温かい、安心して読めるミステリだ。ダイエット中の人は読まないほうがいいかも。

2015/9/22