カラシニコフ

カラシニコフ

2021年7月24日

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「カラシニコフ」 松本仁一 朝日新聞社

「ノンフィクション新世紀」から読みたいと思った本。AK47と呼ばれる一九四七年式カラシニコフ自動小銃は、劣悪な環境でも、いい加減なメンテナンスでも壊れにくく、女子供にも扱いやすく、しかも安価である。内戦やクーデターが起きる度に活躍するのは、このカラシニコフだ。

この小銃を開発したカラシニコフ氏がまだ存命だと知って、著者は会いに行き、様々なインタビューを行う。取材嫌いのカラシニコフ氏だが、農村出身の著者と麦刈りの時の傷の話から意気投合して、じっくりと話をする機会を得る。

彼の開発した銃が未だに世界中で様々な事件を起こし続けている、その実態とインタビューとが描かれている。

カラシニコフで何人もの人を殺した元少年兵に、これからどうやって生きていくのかを尋ねたら、日本に連れて行ってくれないかな、と著者は言われた。その言葉の切なさ辛さ重さに呆然としてしまった。

人がテロ集団に参加するのも、ゲリラになるのも、政治的な意図だけからではないし、宗教的な決意だけからでもない。そうすれば、食べていけるからだ。

カラシニコフという銃を通して世界を見ると、違うものが見えてくる。私たちが、私達の子供がいまこうしてここにいることの意味を考えこんでしまう。

2013/5/26