3月のライオン17

3月のライオン17

146 羽海野チカ 白泉社

16巻を読んだのが去年の10月。久しぶりだわー。

将棋が全然わからない私が、なぜこの漫画を夢中で読めるのだろう。とりわけ今回は対局中継のような場面が延々と続くのに、ちっとも退屈しないって、何。桐山と二階堂、幼いころからのライバル同士のひりひりする対決。孤独だった二人の友情。時折挟まれる先崎学の解説も非常に効果的で、将棋の戦法がわからなくても、ちゃんと人間模様が伝わる。

途中からは、桐山の恋人、あかりちゃんの食べ物にまつわる大冒険。工事現場の作業員さんたちのおいしいおやつや、作業台を作ってくれたお礼の家庭的なカレー。近所の肉屋や喫茶店や文房具屋までも巻き込んで、売り上げが伸びていく。食べる人は皆笑顔になっていく。

将棋とおいしいものの二本立て。前からそうだったけど、この巻はとりわけその喜びと幸せに満ちている。でも、こんな楽しい嬉しいばっかりで大丈夫なのか。この漫画、どこへ行くのか。

将棋は比喩ではなく、勝ちと負けしかない、と先崎学が書いていた。それってものすごく残酷な世界だ。駄目だったけれど、得たものがあった、とか、まあまあ頑張ったから、それはそれで評価できる、とかじゃなく。きっぱりと、勝ちか負け。〇か×。あー、私には無理な世界だ。非情な世界だ。でも、そこでかかわりあう、戦い合う人たちの熱い思い、温かい交流は確かにある。だからこそ、これからどこへ向かうの。気になる漫画だー。