83 上坂あゆ美 書肆侃侃房
なかなかのタイトルであるが、これは短歌集である。ちなみに出版社名も読みにくいよね。「しょしかんかんぼう」と読むのだそうです。以後、お見知りおきを。
「本の雑誌」四月号は「短歌の春!」という特集だった。で、短歌集を読みたくなったのだ。短歌と言えば俵万智が定番だが、それだけじゃない。穂村弘もいる。それに加えて、私はずっと朝日歌壇の短歌を毎週読んでもいたのだ。そこにはMさんの家族がいて、お嬢さん二人とお母さんがよく投稿されていた。お嬢さんたちの短歌は小、中学生くらいからずっと見ていて、成長されて大学生になり、就職もされたことが短歌から読み取れた。一度も会ったことがないのに、とても親近感のある人たちだった。だけど、ある時、朝日新聞に見切りをつけてしまったので、以来、彼女たちがどうされているかは知らない。それは寂しいことだ。
この本は、おばあちゃんのお骨上げの方法をyoutubeで調べるという、極めて今風の短歌から始まる。両親が離婚して、姓が変わって、母の恋人があらわれて、みんなで家族でいようとすることが結構大変で、父はフィリピンに行って別の女性と結婚して、そして亡くなる。そんな日々が歌われていて、一編の小説を読んだかのような読み応えの歌集である。
短歌を作るとき、わたしのなかにいるたくさんの人たちや、世界に対して、殴ったり殴られたりしながら、本当の輪郭みたいなものを探す。それを繰り返していると気づいたら歳をとっていたりして、こんなふうに闘って老いる自分を美しいと思う。 (引用は「老人ホームで死ぬほどモテたい」より)
とあとがきにあった。自分の中にいるたくさんの人たちと殴ったり殴られたりするという感覚は、なんだかわかるぞ、と思う。でも、気が付いたら年取ってたというにはまだ早いよねー。と、本当に気が付いたら年取ってしまっていた私は思う。年とったらこうしよう、と思っていたことは、今、やらないともう間に合わないことに気がついちゃった私なのでね。
それにしても、老人ホームでモテたいか?と夫に訊いたら、もう、そんな気力はない、という。私はモテたいとは人生で一度も思ったことがないので、たぶん老人ホームでもそうは思わないだろう。モテるってなに。自分の一番好きな人が私を好きでいてくれたら、ほかの人が私をどう思おうとあんまり意味はない。モテるって不特定多数に受けることなんだとしたら、私は別にいらない。私の望むたった一人に受けたら十分だし、それこそが最も大事で難しいことだからね。
というわけで、この題名に共感はできないが。でも、年取って本当にひとりになったら、モテたくなるのかな。それよりは、一緒におしゃべりしてくれる人がそばにいれば、その方がありがたそうだけれどな。
と、本の感想とは全く離れていく私であった。すまぬ。