うたかたモザイク

134　一穂ミチ　講談社

どうしてこの本を読むことにしたのかよくわからない。図書館に予約を入れてからかなり経って手に入ったので経緯を忘れてしまった。本屋大賞にノミネートされているらしいので、そこからなのかな。

短編集である。最初は馴染めない作家だと思った。若い人の書くもんは、おばちゃんにはわからんのう、と老眼をこすりながら読むような感覚。だが、「神さまはそない優しない」という全編大阪弁で書かれた一編には感心した。転生ものと言えばそれまでなんだが、はっとするような展開であった。それから振り返ってみると、霊も、ゲイも、知的にゆっくりした子も、天才も、単なる物質も、生まれ変わりの生物も、みんな同じ重さと温かさで捉えられており、丸ごと受け止められているような物語ばかりだった。なるほど、そういうことか、と思った。どんな存在も同じように大切に扱う。その姿勢は確かに貫かれている。

もともとはBL作家だそうだ。うーむ。どうやら私は性的な描写を事細かに読むのはあまり得意ではないらしい。そこで鼻白んでしまって、その世界に入り込めないようなところがある。最初になじめなかったのはそのせいかもしれない。まあ、それは好みだからなあ。

だとしても。この作家は信用できる、と思った。読んでよかった。