つまをめとらば

つまをめとらば

133 青山文平 文芸春秋

「本売る日々」がとても良かったので、直木賞を受賞したというこの作品も読んでみた。江戸時代を舞台にした短編小説が六編。平和な社会で生き方に戸惑う武士、どっしりと生きる女性。その対比が興味深かった。もう武家の社会じゃない、町人になればいい、とか、地方で俳諧師として生きていけばいい、とか言われて戸惑う男たち。武家の意義が失われていく中で、女性は淡々と生きている。

ふと吉行淳之介を思い出した。女性を描く名手だと言われていたが、彼の描く女性に共感したことはほぼない。それに比して青山文平の描く女性は、生きている。男性から見て捉えどころのない、不思議な部分があるというところでは同じかもしれないが、そんな女性に頼ったり、感心したり、逞しさ美しさに圧倒されたりという感覚が、よほどリアルに感じられる。それは、たぶん同じ人間として、対等な存在として真正面から向き合っているかどうかという違いかもしれない。

「本売る日々」のほうがより深く心に響くものがあった。が、あの作品に到達する道筋に、この本があった、と思える一冊であった。