ひげのサムエルのおはなし グロースターの仕立て屋 こぶたのピグリン・ブランドのおはなし

ひげのサムエルのおはなし グロースターの仕立て屋 こぶたのピグリン・ブランドのおはなし

2021年7月24日

53「ひげのサムエルのおはなし」 ビアトリクス・ポター 福音館書店

54「グロースターの仕立て屋」 ビアトリクス・ポター 福音館書店

55「こぶたのピグリン・ブランドのおはなし」

ビアトリクス・ポター 福音館書店

市内の図書ボランティア対象の読み聞かせ講座で、ピーター・ラビットシリーズをできるだけたくさん読む、という宿題が出た。実は私は最初の一冊二冊しか読んだことがない。図書館の二階の会議室で宿題が出され、ゆっくり下の図書室に降りている間に、他の受講者がわらわらとたくさん借りてしまって、三冊しか手に入らなかった。まあ、また、借りるさ。

ピーター・ラビットの可愛らしさは日本人すべてが知ってるんじゃないかと思う勢いだが、その絵本をちゃんと読んだことがある人は案外少ないんじゃないかと思う。ポターの物語は、意外に大人向きのものもあって、シニカルだったり、ふうんと唸って感心するようなものもある、と私ははじめて知った。

「ひげのサムエルのおはなし」は、子猫がネズミに食べられちゃいそうになるおはなしで、うげっと思ってしまうような料理の過程も出てくる。筆者の視点はネズミにも猫にも平等で、どちらかに肩入れすることはなく、その冷静さがむしろ不思議な迫力を生み出している。

「グロースターの仕立て屋」は、小人が靴を作る話にちょっと似てる。靴屋の描写が冷徹でリアルなのには驚いた。同情や哀れみといった味付けが殆ど無く、ドライな筆致なので、読んでいていろいろなことを考えてしまう。

「こぶたのピグリン・ブランドのおはなし」は許可証の存在が動物を救うんだなあ、と人間の立場から考えてしまう。ポターさんて、何考えてこのお話を書いたんだろう。動物と人間をどう区分けしたんだろう。

ピーター・ラビットシリーズの絵本は、私が想像していたような可愛らしい愛らしい物語ばかりじゃない。もっとリアルでドライで冷徹だ。これは発見だった。もう少し読んでみよう。

2012/6/30