コスタリカ

コスタリカ

19 伊藤千尋 高文研

副題は「『純粋な人生』と言いあう平和・環境・人権の先進国」である。サンパウロ支局長、バルセロナ支局長、ロサンゼルス支局長などを歴任した元朝日新聞の記者が書いた本。

何を隠そう私はカエル好きである。キッチンのカレンダーは美しいカエルの写真だし、家にはカエルの置き物や絵も飾ってある。カエル型のリュックサックも持っている。コスタリカと言えば、私にとってはカエルの国である。美しい多彩な色彩のヤドクガエルがいる国。コスタリカという名のボードゲームも持っている。ジャングルを進んでカエルやバシリスク、カブトムシ、サルなどの生物を手に入れるゲームである。いつか行って、多様な生物たちと会いたい。小さくてきれいな本物のカエルを目にしたい。そう思っていた。逆に言えば、それが私のコスタリカのイメージのすべてであった。

この本は夫が先に読んで、すごいぞ、いいぞ、としきりに勧められた。コスタリカって日本と同じで軍隊をもたない国なんだぜ、それも日本みたいに形骸化していない状態で。それだけじゃなくて人権や平等意識が素晴らしく発達している・・・。って、そんなイメージ全然なかったけどなあ。読んでみたら驚いた。

1948年、コスタリカは国軍を解体した。軍の司令部だった要塞は、国立博物館になった。平和の理念だけのためではない。軍事費が国家予算の30%を占めていては、貧しい開発途上国は予算が足りない。いっそ軍隊をなくし、浮いた費用で国を発展させようという狙いもあった。廃止した軍事費は、なんとそのまま教育費にあてられた。それまで教育費に充てられていた予算は医療と福祉に回された。その結果、貧しい開発途上国でありながら、北欧並みの教育、福祉国家に成長した。そして、社会は飛躍的に豊かになった。

政治のあり方も驚愕であった。国会議員は連続再選ができないという。選挙のたびに全員が入れ代わる。癒着をなくし、権力者を作らないためである。日本の、親から子へ議席を引き継ぐ世襲議員だらけの現状を考えると夢のようである。大統領は以前、完全再選禁止であったが、若くして大統領になった政治家がそのまま埋もれてしまうのも惜しいという理由で、大統領を終えた後8年経てば再び立候補できることにはなった。が、任期は最大で二期8年までである。日本のような、あのとんでもない長期政権など絶対に起こりえない。それだけではない。国会議員は46%が女性である。比例代表の候補者名簿を男女男女と交互にする仕組みが法律で定められているという。しかも、ある選挙区で「男女男女」の順番であれば、隣の選挙区では「女男女男」の順番にするという。日本もそうすればいいのに。親が政治家だったというだけで、なんの能力もない男が政治家になるくらいなら、政治経験がなくても理想に燃える女性が議員をやったほうがずーっとましになると思うよ、いや、本当に。

コスタリカに原発はない。再生可能エネルギー100%が達成されている。75%が水力発電、13%が地熱発電、12%が風力発電である。地熱発電とはすごい技術だ、と感心したら、なんと日本の技術援助によるものだという。ちなみにアイスランドでも日本の地熱発電の技術が生かされているそうだ。日本でも、地熱発電をきちんと開発すれば原発20基分の電力がまかなえるらしい。この情報は経済産業省の研究機関のHPによるものだ。なんだか読んでいてすごくショックを受けてしまった。

コスタリカに行きたいという思いはカエルから変容した。というか、付け加わった。国内で盛んだというエコツーリズムに参加したい。この国の様々な政治、文化を見てみたい。もちろん、カエルも、ケツアールという美しい鳥も見てみたい。遠いよなあ・・・。日本からアメリカまあで11時間。さらにそこから4時間。アメリカには何の興味もないが、コスタリカには行ってみたい。ああ。間に合うかしら。体力、もつかしら。