三つのまほうのおくりもの

三つのまほうのおくりもの

2021年7月24日

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「三つのまほうのおくりもの」ジェイムズ・リオーダン ほるぷ出版

新年度の読み聞かせ活動が始まった。昨年度は何かと忙しく、絵本を選ぶ余力がなかったのと、一度試しにやってみたかったのとで、一年生から六年生まで、全てのクラスを「王さまと九人のきょうだい」で読み通した。驚いたことに、どの学年のどのクラスでも大受けであった。ひとりで読むより大勢で読んだほうがより面白くなる本ってあるのだなあと思った。と共に、昔話の持つ力に感心した。

今年度はもう少し丁寧に絵本を選んでいこうと思って読んでみたのがこれ。ベースはロシア民話。貧乏な弟と、金持ちの兄さん、どちらも名前はイワン。なんでロシア民話はいつもイワン一本槍でいこうとするのだろう。何か謂れがあるのかな。

ありがちなネタだが、弟は正直者でちょっと間抜け、兄は金持ちでずる賢い。食べるものがなくなった弟が兄に相談に行くと、カップいっぱいの小麦粉を貸してくれる。ただし、十倍にして返せよ、と言われる。ところが帰途、弟イワンは小麦粉を風に吹き飛ばされてしまう。怒ったイワンは風を追いかけ回し、風から魔法のテーブルかけをもらう。そのテーブルかけをテーブルにかけて「ごちそうをおくれ!」と言うと、テーブルかけはぎゅっとすぼまって、広がったときにはごちそうが山ほどのっている!

うーん、このテーブルかけは欲しいぞ、と心から思う。細かいメニューも指定できるともっとよろしい。今ならふきのとうの天ぷらとかね。などと邪念に走ってしまう私。

それはともかく、そのテーブルかけを弟は兄に騙し取られてしまう。で、次に弟はまほうのやぎを手に入れるのだが、それも兄にとられ、最後に手に入れたまほうの袋からでてきた大男が「やるべきことをや」ってくれた、というお話。

兄もずる賢いが、弟も馬鹿すぎるぞ、と思うのも含めて定番の物語。でも、こういうパターンは世界中でずっと語り継がれてきたのだから、やっぱりある種の真実を含んでいるのだろうなあ。バカ正直は報われる。まあね、そればっかりじゃない現実も知っているけれど。

四年生に読み聞かせようかと思っていたのだが、14分強かかる。持ち時間は15分だが、開始がちょっとおくれたりするともう間に合わない。最後の落ちまでたどり着かないとどうしようもないし、今回はこの本は見送り。でも、面白かった。

ところで、気になって調べてみたら「イワン」はキリスト教のイオアン、つまり聖ヨハネにちなんだロシアや東中欧のもっともポピュラーな男性の名前だそうだ。英語のジョン、フランス語のジャン、イタリア語のジョバンニ、ドイツ語のヨハン、スペイン語のファン、ポルトガル語のジョアン、オランダ語のヤン。みんな、イワンの仲間だそうだ。イワン大帝は15世紀後半、モスクワ公国をタタールの軛から開放し、イワン雷帝は16世紀、恐怖政治を行った。イワンについてわかったのは、このくらい。

2017/4/22