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「大世界史 現代を生きぬく最強の教科書」池上彰 佐藤優 文藝春秋
「教養としての世界史の読み方」のなかで、「歴史家でない人の書いた、わかりやすく説明してくれた読みやすい世界史の本」として例に挙げられていた本がこれである。
この本も「なぜ歴史を学ぶのか」から始まっている。歴史的背景を知らないと、結局は現代の出来事もなかなか読み解けない、と最初に二人が語っている。歴史を学ぶことは今を知ること、自分を知ることである、という視点は「教養としての世界史の読み方」と共通している。と言うか、歴史を学ぶってそういうことなのだ。
我々は(というか私は)中東情勢やイスラム社会について、実に無知である。世界史の教科書でずいぶん読んだつもりだったが、それでも雲をつかむような話である。それがこの本を読むと、かなり実感を持って理解できる(気がする)。世界は中東から動いている、と感じられる。
が、この本は2015年に出されたもので、既に現状が違ってきていることも多々ある。例えば、トランプが泡沫候補からだんだん本気で大統領を目指し始めている、と書いてはあるが、大統領になることは100%ないけどね、という論調なのだ。ああ、この当時の二人に何か言ってやりたい、と一瞬思ったが、いやいや、彼らだって今を生きてるからね。ことほどさように歴史の流れは予想しにくく、つかみにくいということなのかもしれない。
「教養としての世界史の読み方」にも「なぜ人は大移動するのか」という章があったが、現代においてやはり移民、難民の問題は非常に大きい。そして、それは歴史上の大きな問題でもあった。島国に住んでいるとそういうことが全然実感できない。が、今後は日本もそこから無縁ではいられないのだろう。
現代に起きていることから遡って歴史を見るという点ではじつに興味深い本であった。
2017/5/4