銀河を渡る

銀河を渡る

2021年7月24日

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「銀河を渡る」沢木耕太郎 新潮社

 

沢木耕太郎のエッセイ集。前回、全エッセイ集「象が空を」を出してから25年経ったという。そんなに経ったのかなあ。月日の経つのは早いなあ、と嘆息してしまう。
 
「歩く」「見る」「書く」「暮らす」「別れる」の五章に分けてエッセイが載せられている。どのエッセイも沢木耕太郎らしい文章である。つまり、対象を非常によく見て、誠実によく考え、最も伝わるであろう言葉を丁寧に選び、まっすぐに書かれている。そして、誰かに評価されようなどとは微塵も思わず、ただただ自分が納得し、満足するものを書こうという生きる姿勢がそこから立ち上がってくるような文章である。
 
この本を読むことで、私は行ったことのない場所に行き、会ったことのない人に会ったように感じる。亡くなった美空ひばりや高倉健という人の知らなかった面に出会って、胸を突かれるような気持ちになる。全く興味のないスポーツの持つ魅力というものに、ふと惹かれる思いを持つ。
 
こんな嘘のない、真っ直ぐな文章を書けたらいいなあと改めて思う。誰かの承認を得ようとするのではなく、自分で自分を支え、正せる人間でありたい、と思う。沢木耕太郎は、やっぱりすごい。

2018/11/19