天涯

2021年7月24日

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「天涯 第一」「天涯 第三」沢木耕太郎 スイッチ・パブリッシング

 

沢木耕太郎の写真集。「第一」は1997年、「第二」は1999年、「第三」は2003年の出版。
 
沢木耕太郎はカメラマンではなく、写真技術が優れているわけでもなければ、それほど立派なカメラを持っているわけでもない。だから、彼の撮る写真はピントが合っていなかったり、ぶれていたり、ひどく暗かったりもする。だが、その素人さ加減が、なぜか現場の空気をむしろ生々しく伝える場合もある、と見ているうちに思ったりもする。
 
写真には時々短い文章が添えられている。それは沢木耕太郎自身の文章であることもあれば、他の誰かが書いた文章の引用でもあったりする。だが、その文章が、写真をより一層深く伝える役割を果たしていることは間違いない。
 
沢木耕太郎の各文章を、かなり網羅している読者にとっては、ああ、この写真はあの時あそこへ行って撮ったものだな、などとわかるものが多い。そして、また彼のルポなりエッセイなりを読み返してみたくなってくる。そういう者にとっては、非常に魅力的な写真集だが、純粋に写真を楽しみたい人間にとっては、なぜこれが面白い?と思うものもたくさんあるのかもしれない。

2018/11/30