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「いつかの岸辺に跳ねていく」加納朋子 幻冬舎
「七人の敵がいる」以来の加納朋子である。お久しぶりだなあ。夫が借りてきたのを回してもらった。
ミステリというよりは不思議ものといったほうがいいのかな。ちょっと風変わりな女の子と、彼女の良さをちゃんとわかっている幼馴染男子の物語が、最初は男子目線で、途中から女子目線で描かれている。
正直なことを言ってしまうと、私は自己犠牲的な物語は好きではない。自分が犠牲になってでも人の幸せのために尽くす、という物語は読んでいてげんなりすることがある。私には絶対にない美点が描かれているからかもしれないし、あるいは私側の論理でいえば、自分を大事にしないで他人を大事にするって結局は不誠実じゃないかね、とも思うからだ。
この本の主人公女子は、どちらかと言うと、大事な人のために自分が何をできるか、ばかり考えて、自分を大事にすることを忘れているような性格である。だから、読んでいてちょっとイライラする。たぶん、イライラしない人のほうが多いんだと思う、私みたいにひねくれてなければさ。
ま、だとしても最後にはうまいことまとまってるわけで、ああ良かったわね、とは思う。加納朋子らしい作品だなあと思うわけである。そして、思い出す。いつも加納朋子の作品に、いい人だなあ、と思いながらどこかで苛ついていたことを。
ということは、加納朋子さんと私は永遠にちょっとすれ違うのかもしれない。私は、きっといい人すぎる人の話が、ほんのちょっと苦手なのだ。そこはもう、どうしようもないことなのかもしれない。
2020/2/3