女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。

2021年7月24日

72

「女の甲冑、着たり脱いだり毎日が戦なり。」

ジェーン・スー 文藝春秋

「生きるとか死ぬとか父親とか」のジェーン・スーのエッセイ。都会で働く大人の女(43歳にしては若々しい)になるために、心身ともに装着せねばならないさまざまな鎧甲冑のお話。

赤い口紅とか、ヨガとか、オーガニックとか、ヒーリングミュージックとか、宝塚とか。自意識過剰な女子が、とかく生きにくいこの世をなんとか生き抜くための心と体の鎧の話は、身につまされたり、つまされなかったり。人によって、気になるところは違うもんなー、と身も蓋もない感想が浮かぶ。

ディズニー映画の「シンデレラ」評は、ありがちだけど、非常に鋭い。

エラと呼ばれるシンデレラは、森で狩りを楽しむ王子をたしなめ、他の女との差別化を図る。「もう一度彼女に会いたい」と王子の開催した舞踏会は彼女の仕掛けた時限爆弾。舞踏会に遅れるのは遅れて合コンに登場する戦術の元祖。エラは二度も王子に自分を「見つけさせて」いる。一回目は舞踏会。二回目はガラスの靴云々。オスっ気の強い男性なら誰だってエラを「自分で苦労して見つけた宝物だ!」と思い込むだろう。自分から仕掛けておいて、「俺が見つけた」と思わせる。楽しい時間の共有後は、自分の意志で消えておいて、魔法のせいにする。が、ヒントは抜かりなく残す。地位と名誉と権力を手にした高スペックの男を手に入れるには、美貌は当然のこと、知能も大胆さも図太さも兼ね備えていなければどうにもならん。でも、エラはこういうだろう。「違うわ、心に愛した人がたまたまそうだっただけよ」と。

確かに、シンデレラってそういう話だ。どんなに弄り倒したところで、高スペックな男子をモノにすることで幸せを掴むしたたかな女の話でしかないよね。

まあ、でも。人にどう思われるか、とか、人にどう受け止められるか、をどんどん気にしなくなったおばちゃんから言えば、必要な鎧甲冑も、年齢と共に、どんどん捨てて身軽になっていけるものよ。ジェーン・スーさん、年取るのだって、悪いことばかりじゃないと思うわ。うふふ。

2019/8/5