降り積もる光の粒

降り積もる光の粒

2021年7月24日

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「降り積もる光の粒」角田光代 文藝春秋

旅にまつわるエッセイがたくさん収められた本である。

角田光代さんは海外の一人旅が好きでいろいろなところに行っている。が、彼女は時刻表は読めないし、地図は読めないし、方向音痴でガイドブックの「犯罪の傾向と手口」を読んで震え上がったりもしている。荷物は最低限の小さなものだけだが、いつも何かが足りなくて後悔する。でも、どんなに困っても、必ず誰かが助けの手を差し伸べてくれるし(それは神様かもしれない、と書かれていて、とてもよい気分になった)、思いがけない出会いのきっかけにもなる。そしてどんなに大変でも、必ず無事に帰ってきている。

たくさんのトラブルがあったおかげで、私はいまこの本を楽しく読めているわけだから、それでよかったよね、なんて勝手に思う私である。

アフリカのマリで女性性器切除手術廃止運動の視察をした話が載っていた。これはどこかで読んだことがある・・・と思ったら、ここであった。それから、震災後の三陸を訪れた話も載っていた。角田さんは、いろいろな場所に行くことを、ためらいながらも敢行している。そして、感じたことを私たちに伝えてくれている。

知ることは、何にもならない、と無力感に襲われることもあるが、それでも、知ることは、いつか何かの力になる、とも思うのである。遠いアフリカの何処かで、幼い女の子や赤ん坊が錆びたナイフで性器を切除されて、そのために命の危険に晒されていることも、震災で多くを失った人々が、どんな思いで暮らしているかも、私は知りたいし、忘れないでいたいと思う。

旅をすることは、多くの人の暮らしを知ることであり、自分を知ることでもある。私も方向音痴でスケジュール管理が下手で失敗ばかりしているけれど、旅をずっとしていたいと思う。

2015/12/24