野宿もん

野宿もん

2021年7月24日

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「野宿もん」 かとうちあき 徳間書店

人生をより低迷させる旅コミ誌「野宿野郎」の編集長による、野宿エッセイ。

野宿ってのは、やったもん勝ちだそうです。誕生日に行う誕生日野宿は、きっといいことがあるそうです。というわけで、たいしてよく知りもしないおじさんの誕生日を祝って、まだ結構若い子の女性の著者、公園で野宿しちゃったりしています。

そもそも、野宿を始めたのは著者が高校生だった頃のことだそうで、それも、最初は友達と二人だったのに、途中で目的地が違う方向になってしまったので、別々に歩き出したんだそうです。そして、夜になると、公園とか、無人駅とか、よくわからない空き地とかで、シュラフに包まって、寝ちゃったのです。いやあ、よく親が許したなあ。

高校二年生の夏、著者は北の青森県から南の山口県まで、本州を歩いて縦断する旅に出ました。一ヶ月半あれば歩き通せると思っていたのですが。

 というわけで、わたしはそれからかなりがむしゃらに歩いたのだが、やっぱり夏休みは足りなかった。歩いて野宿して歩いて野宿して、和歌山県まで辿りついたころ、八月の最終日となった。ああ、明日から学校が始まってしまう。
下関までゆこうとしたら、一日中時間歩いたって、あと一週間はかかるだろう。
「もうしようがない、あきらめよう」
と、わたしは思った。
「学校のことはあきらめよう!」
(中略)
おまわりさんにはなるべく見つからないようにしていたけれど、一度見つかり実家に電話をされてしまい、母も怒られていたとばっちりで、気の毒なことである。

(引用は「野宿もん」かとうちあき より)

「あきらめよう」と思ったのが、学校だったのは、なんというか、あっぱれです。おまわりさんに電話されたお母さんの話題からも、どうやら太っ腹な親であることが伝わってきます。なかなか、すごいぞ。

「うちの子どもも、野宿するくらい元気があればいいなあ」
と夫はいうのです。いやいや、息子はいいけれど、おちび娘には、やっぱり危険だからやめてほしい、と母は保守に走るのでありました。
「でも、息子は絶対に野宿なんてしないもんなあ。そんでもって、おちびのほうは、野宿くらい、やりかねんよなあ。」と夫。
まこと、この世はままならぬものであることだわ。

いったい若い女性が野宿旅をしていて、危険はないのか?と思うのですが、案の定、著者は、四国お遍路旅で自称「行者」のおじさんに、迫られたりしています。しかし、そのおじさんは、「姦通をすると天からやられる」などと先に口走っていたせいで、それを指摘されて、あっさり諦めてくれるのです。うーむ、危険なんだか、安全なんだか。

もうこの年になったら、襲ってくるおじさんもあんまりいなさそうだし、子どもたちが巣立ったら、野宿旅もできるかなあ、などと妄想する私であります。でも、暑いのも、寒いのも嫌だし、寝る時、下が硬いのも嫌だなあ。やっぱり、おばちゃんに野宿は向かないのかもしれないのでありました。

2012/4/9