いい感じの石ころを拾いに

いい感じの石ころを拾いに

2021年7月24日

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「いい感じの石ころを拾いに」宮田珠己 河出書房新社

 

宮田珠己は、わが家では、新刊が出れば必ず即買する作家である。彼が最近石拾いに凝っていることは知っていた。だから、石の本を出すと聞いても不思議はなかった。今までも、大仏などの巨大建造物とか、ホンノンボというベトナムのミニ盆栽とか、普通の人があまり興味を持たない分野にのめり込んでは本にしている人だったので、まただな、と思ったのだった。
 
私が宮田珠己を好きなのは、あくまでも、いい加減であるところだ。石が好きになったからといって、地質学にのめり込んだり、石の成分について勉強したりはしない。ただ、いろんな海岸や川岸に行っては、自分の手で拾って、いい感じだと思った石を拾ってくるだけ。拾いすぎると重いから、たくさん集めても、その一部しか持ち帰らない。基本、手で触ってすべすべしているのがいい、などと子どものような基準で選んでくる。そういう適当な付き合い方が、好ましいのだ。
 
でも、ただあちこちに行って拾ってきました、だけではさすがに本にならないので、同好の士を見つけてはインタビューもしている。石を好きな人って、やっぱりちょっと変わっている。その変わりっぷりも、なかなか好ましい。
 
この本にはものすごくたくさんの石の写真が載っていて、それを見ていると、なるほど石って面白いな、と思えてくるから不思議だ。実は、我々夫婦はこの本の宣伝のための宮田さんのトークショーに行って、ほとんどの石の現物も見ている。現物は思いの外にちっちゃくて、よく見ないと味わいが伝わってこないものもある。写真のほうが、ぐっと来たりするのだ。風景石なんかは本物のほうが面白かったりしたけどね。
 
宮田さんは、写真が載せられなければ本にする意味は無い、それもカラーじゃないと意味は無い、と断言されていた。たしかにそうだ。カラー写真で拡大された石は、一つ一つに人格じゃない、石格のようなものが感じられる。
 
タモリ倶楽部で時々凄くレアな趣味の人を特集しているけど、そんな感じの本ではあった。

2014/6/30