知の旅は終わらない

2021年7月24日

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「知の旅は終わらない 僕が3万冊を読み100冊を書いて考えてきたこと」

立花隆 文藝春秋

立花隆はものすごく頭のいい人だ。頭が良すぎてついていけない部分も多々あるが、難しいことをスッキリと整理して説明できるのも頭の良さの証であって、彼の書いた本は、わかりやすいことが多いし、大いに感心する。

政治的な分野で田中角栄は私にとっても大きなテーマであるので、立花隆は興味深い人であった。が、彼にしてみれば、田中角栄なんてどうでもいい人なのであって、ただ、あまりに反撃がひどすぎたので、対抗上、長く時間を割いてしまっただけらしい。

私が現実的に立花隆に助けられたのはがんに係る領域で、母が乳癌にかかり、手術を受けた前後で彼も膀胱がんにかかっていたため、当時書かれたがんに関する著作がいくつかあって、それが非常に役に立った。母が抗癌剤治療に打ちのめされて、続けるかどうか選択するに際し、彼の本を母の参考にしてもらったし、私自身もそこから自分の意見をまとめることができた。

Z会ブログを始める以前にあったパルティオという学生や保護者の交わるSNSで、後に本物の東大生になった高校生から「東大生はバカになったか 知的亡国論+現代教養論」を勧められ、非常に面白く読んだ。東大生が馬鹿になったかどうかはどうでも良くて、学ぶとはどういうことか、ということが重要なのだなあと改めて思ったものだ。

この本は、立花隆の自伝のようなもので、今までどんな本を読み、どんな本をどのように書いてきたかが描かれている。政治社会から物理や生物、宇宙、医学に至るまであらゆる領域へ知的興味は広がり、それを極めてきたことがよく分かる。まだ書きたい本があるそうで、どうかどうか書ききってから死んでいただきたい。「死はこわくない」とご本人もおっしゃってるけれど、もう少しあとにしていただきたいものだ。

立花隆のご両親は敬虔なクリスチャンで、本人は信仰は持っていないが、精神的な背景としては大きな影響を受けた、という。そこが私自身との共通点であり、であるからこそ理解できる面もある。

2020/7/8