エーミルと小さなイーダ

エーミルと小さなイーダ

2021年7月24日

「エーミルと小さなイーダ」  リンドグレーン

いたずらっ子のエーミルは、いたずらが見つかって、怒られるたびに、作業小屋に閉じ込められます。でも、それはそんなに怖くもいやなことでもなくて、そのたびに、エーミルは、作業小屋の中の木切れを削って、人形を作ります。小さな妹のイーダは、それがうらやましくて、自分も作業小屋に閉じ込めてほしいのに、いたずらができなくて、悔しい。エーミルに、いたずらを教えてもらおうとしても、「いたずらってしようと思ってするんじゃないんだよ。そんなつもりはないので、いたずらになっちゃうんだよ」ですって。

エーミルは、いたずらっ子だけど、やさしい、あったかい男の子だし、イーダも本当に、かわいい妹です。農村での楽しい暮らし。生き生きとした、子どもたちの日々。幸せって、こういうことをいうんだな、と思うような物語です。

作業小屋でエーミルの彫った人形をほしがる人はたくさんいます。お金を払ってもいいという人だっています。でも、エーミルは、全部取っておいて、自分の子どもたちにそれを上げるつもりです。・・・エーミルのモデルは、リンドグレーンのお父さんだと言われています。なんて、暖かい、優しいお父さんなんでしょう!

つらく苦しい思いをする子どもたちの問題を掬い上げるような児童文学もたくさんあって、そういうものに心惹かれる子どもたちがいるのもわかります。そこに助けを感じるような子どもも、多くいるのでしょう。

でも。
やっぱり、暖かく、たのしく、幸せな世界を味わえる、その中で自分もほっとし、安心して、心を和ませることができる、そんな子どもの物語は、永遠に必要で、大切で、大きな力となる。そう思います。

2008/10/12