謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

2021年7月24日

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「謎の独立国家 ソマリランド
そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア
高野秀行  本の雑誌社

皆さま、お久しぶりです。
いやあ、引越しはきつかった。結婚以来、10回目の引越し。慣れたもんだと思ってたんだけど、今回はへとへとになった。歳をとったということでしょうなあ。驚いたことに、本が全く読めなかった。時間が空いても疲れちゃって読めないのよ。そんなことってあるんだ。そんな訳で、今年度一冊目はこの本でした。時間かかったなあ。

実は大阪で、この本のための高野秀行トークショー&サイン会に我々夫婦は参加していました。その会に参加するためには当日会場となる本屋でこの本を買わなけりゃいけないんだそうだ。ところが、その時点ですでに我が家ではネット別の本屋にで購入の予約を入れてしまっていた。その店はキャンセル不可だったので、泣く泣く「謎の独立国家ソマリランド」を重複買いすることに。えーん。まあ、そのおかげで夫婦で取り合いをせずに同時進行で読めたんだけどね。

もちろん、高野さんには二冊買っちゃったのよ、と文句を言った。それはすみません、と高野さんと担当編集者の杉江さん二人から頭を下げられましたわ。トークショーの内容はとても面白かった。この本に書いていないことも話してくれたし。ますます高野ファンになってしまった。それにしても、ソマリアに平気で入っていく男が、お笑いに厳しい大阪でトークショーをするのが怖いと怯えていたっていうのがおかしい。

ソマリアというと飢餓と戦闘に支配された超危険地域というイメージが強い。だけど、実はソマリアの中には治安の安定した民主国家「ソマリランド」が存在するらしい、というのがこの本の発端。本当にそんな国があるのか?と調べるところから始まって、実際に行ってみたら、あったんですねえ。ソマリアには、平和で言論の自由が保証されているソマリランドと、海賊国家のプントランドと、強者が弱者を支配するリアル「北斗の拳」のような南部ソマリアがあった。高野さんはソマリランドの平和に驚くと同時に、なぜ、ここだけ平和が保たれているのかを知るために、海賊国家や「北斗の拳」の国にも足を伸ばしていく。

高野さんらしさがあふれた力作。誰も手を出さない分野に自分の足で踏み込んでいって、あくまでも「実感」を手に入れる。かと言って、肩肘張った冒険ではなく、のんびりと現地の人と関わりあいながら、生活感あふれる日々を過ごしていく。

この本を読むと世間に報道されているソマリアの実態とあまりに違うので驚いてしまう。ちゃんと現地で過ごしてみないと、地元の人とじっくり関わってみないと見えてこないことがたくさんあるのがわかる。分厚い本だけど、読んで損はしないと思う。と言っても、アフリカの国の歴史だからねえ。途中、混乱するところはあるかも。そうならないように、とっても工夫されていて、その工夫もなかなか楽しい仕掛けではあったのだけど。

2013/4/17