貧困の戦後史

貧困の戦後史

2021年7月24日

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「貧困の戦後史 貧困の「かたち」はどう変わったのか」岩田正美 筑摩書房

敗戦、復興、経済成長、「一億総中流社会」、「失われた20年」と貧困について時間の流れを追って書かれている戦後貧困史。日本の歴史には、常に貧困層が存在し、彼らがどのように生き、どのように社会で遇されてきたかがよくわかる。

敗戦後のいわゆる浮浪児の問題は、以前に石井光太の「浮浪児1945-」で読んだことがある。結局、国は彼らに大したことをできなかった。ただ、見えないところへ追い込み、形ばかりの「教育」を施し、脱走や逃亡が繰り返された。

以来、様々な形でこの国に存在し続けた貧困に、国家は、いったいどれだけのことをしてきたのか。そこには、貧困は恥ずべきことであり、本人の責任であり、国の援助を受けるのは罪であるかのような意識が常に根底にあり続けている。作者は「終わりに」で

貧困ははもう十分「自立的」であり、それが問題なのだ

述べている。そして、

貧困の責任を個人が引き受け、貧困を不可視化する市場や企業の日本的仕組みを変えていくのは困難な道程であろうが、そのような転換なしには、重なり合った貧困はますます社会から遠ざかろとして、その「かたち」すら明確には見出だせなくなるかもしれない。「かたち」が曖昧な貧困の放置は、この社会の不安と分断を不気味に拡大させていくことになるだろう。

と結論づけている。ネットカフェ難民や未受診飛び込み出産、子供の虐待の裏にある見えない貧困が、じわじわと増え、差別を受け、生活保護世帯が蔑まれる現状を、私達は見ないふりをしていてはいけないのではないかと思う。

(引用は「貧困の戦後史」岩田正美 より)

2018/3/24