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「雪男は向こうからやって来た」 角幡唯介 集英社
この人の「空白の五マイル」は傑作だった。高野秀行さんの後輩で、新聞記者をやめて、学生時代からの自身の課題だったヤル・ツアンポー川峡谷の未踏査部を単独調査、ほぼ全容を解明したノンフィクションは圧巻だった。この本は、そのツアンポー探検に出る前に参加した雪男探査の記録ノンフィクションだ。
「空白の五マイル」と比べてはいけないんだろうな、と思う。あちらは、学生時代から、何年も何年もかけて自分の夢をつかむために出た探検のノンフィクションで、こちらは、そもそも最初はなんの興味も持っていなかったのに誘われて参加しただけの探査だ。温度が違いすぎる。
その温度差を冷静に誠実に描いたノンフィクションだという言い方もできる。できるけれど、なんだかなあ。
2011/9/24