ほんのちょっと当事者

ほんのちょっと当事者

2021年7月24日

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「ほんのちょっと当事者」青山ゆみこ ミシマ社

 

当事者というと、いわば新聞記事で見出しとなるような「大文字の困りごと」を抱える人のようだが、それだけではない。ごく小さな困り事やふと感じる生きづらさ、自分でも見落としていたあれこれに目を向けて、ほんの少し当事者意識をもって改めてぐるりと回りを見渡せば、世界の見え方が少し変わっていく。それを書いてみたのが、この本だそうだ。
 
クレジットカードの使い方が下手で、自己破産しそうになった話から始まって、日常に差し障りがないレベルでの難聴であること、言葉で自己表現するのが難しい人たちの話、性暴力、介護と終末期鎮静、おねしょ、津久井やまゆり園、働き方改革、遺品整理・・・。様々な話題が、自分自身のことから出発して、社会に向かって広がっていく。
 
考え方全てに賛成するわけではない。それってどうなの、と思うことも書いてある。が、そうやって立ち止まることで、気がついていなかったことに気づいたり、違う視点をもらったりして、まるで様々なテーマをもとに、よく物を考える友達と長々とお喋りをしたみたいな感覚がある。そりゃそうだ、どんなに仲の良い友達とだって、全てにおいて一致することはないからね。
 
生きていると、いろいろなことに出会う。そんなもんか、とそのまま受け入れたり、諦めたり、見ないふりをしたりしないで、私は当事者である、とちゃんと自覚して、それに対してどう振る舞うかを考えたい、選びたい。背筋を伸ばして生きていたい。そう思えるような本であった。

2020/5/19